誰かの手の感触が、その握力が、仄かな温かさが、全身を駆け巡る。
ああ、なんて奇妙な心地なんだろう。私はこれから首を絞められて、死ぬのだというのに──
──うっそりと、恍惚げに笑み。静かにまぶたを閉ざす。
◇
目覚めた地は、天国でも地獄でもなかった。
その証拠に、己の胸に手を当てると、規則正しい鼓動と体温が感じられた。
「……私の第二の生が始まった、ということでしょうか」
起き上がり、歩き出す。しかし、生きている心地はしなかった。
心にぽっかりと空いた穴が、静かにこの身を蝕むのを、ただ静かに自覚していた。