かつて小さな泉が湧き、小さな小さなニンフたちが生まれた。
ニンフは自由に水を泳いだ。
泉やニンフたちは段々と大きくなっていき、他の生き物の知ることとなった。

人間。
喉が渇いた一人の人間が澄んだ泉の水を飲み、満足して帰って行った。
次は何人かの人間が来て、水を飲み、ニンフと遊んで帰った。
その次は、泉を泳ぎ、
ニンフの一人をさらい、

泉の周りにはたくさんの人間が住むようになった。
泉は湧き出した頃と同じくらい小さくなった。
水には人間の味がついた。
たくさん住んでいたニンフは姿を消した。

ニンフの一人、ポリペが特に許せなかったのは、
自ら人間に取り入り、人間の妻になったニンフだ。
ポリペは彼女に仕返しを試みたが、あっという間に蹴り出されてしまった。
泉が人間に汚されてしまったニンフには力が残っていない。

ポリペは汚れた水を啜りながら、復讐の時を待った。

時は流れ、一人の女がポリペの前に現れた。
木のニンフだろうか、それとも…
とにかく泉を汚した相手は許さないのだ。
長い間伸ばしていた牙でポリペは女の喉元に喰らいつこうとしたが、
虚しく地面の下に植えられてしまった。

汚れた土の中でポリペは、人間に対する恨みを募らせるのだった。

ある日、ポリペの触腕の一つが地面を突き破った。
触腕はそのままちぎれ、何処かへ這い出していった。
きれいな泉はあるのだろうか…

試行領域が健やかになったところで、あの美しい水辺はもう戻ってこない。